【ブログ小説】失恋系小説 全ての辛い片想いの癒しになれれば

 

1章 叶わない恋の入学式

 

 

長い冬を紙と睨み合い

 

ペンを握りしめ超え

 

訪れた桜が迎える春の地元

 

 

 

古き良き仲間と別れをして

 

巣立った中学校

 

 

次の3年間は桜が満開の

 

ピンク色に染まった世界

 

 

新しい世界の幕開けに期待と不安を持ち

 

同時に人生を大きく変える出会いが

 

予告なく迫っていた四年前の春

 

 

 

 

最寄りの駅を3つ進んだ先にある駅から

 

五分歩けば着いてしまう母校

 

着慣れない制服に身を包み

 

新たに高校生となった自分に少しだけ

 

期待と胸を晴れた

 

 

 

入学式の時、教室には

 

顔も知らない同じ年に生まれた

 

これから3年間過ごす仲間達

 

 

 

今思い返せば、あんなにうるさかった

 

この世代もこの時ばかりは静かだった

 

 

 

おぼつかない足取りで入学式を終え

 

高校生になって3日目の日

 

 

先生達の自己紹介があった

 

担任の先生含め他の先生達の名前や

 

専門教科などが淡々と語られていった

 

 

正直、退屈だった

 

 

三階の教室の窓から見える

 

風に揺られ散っていく桜を見つめ

 

3年がとても長く感じた

 

 

 

その時、ふと横を見ると

 

可憐で酷く落ち着いた1人の先生が

 

僕の横に立っていた

 

 

自分の自己紹介まで他の先生達は

 

教室の後ろで待機していた

 

その先生も自分の番を待っていた

 

 

この時は何も感じなかったが

 

おそらくこの先生の横顔を始めて見た

 

この瞬間こそ

 

 

今でも忘れない先生との出会い

 

そしてそれは、今でも消えることのない

 

叶うことのなかった片想いの始まり

 

 

 

 

中学時代は楽しかった

 

そう考え今の生活に不満を感じ

 

学校を辞めようと決意した雨が降る五月

 

 

特に辞める理由はなかった

 

友達も出来たし、いい人達ばかりだった

 

だが、この退屈に勝るものがなかった

 

 

 

辞めて働こう

 

そんな甘い考えだけが先行して

 

退学届を持って登校した

 

 

 

最後の高校生でいられる日ぐらい

 

真面目に授業を受けようと

 

遅刻もせず紙に字を書き続けた

 

 

 

昼食を取り終えた午後の授業

 

運命の歯車はこの時、回り始めた

 

 

 

5時間目の授業は担任の先生と

 

あの時、教室で見た先生が受け持つ授業

 

 

 

優秀とはかけ離れた僕は

 

授業の内容についていけず

 

不眠からくる眠気に勝てずに

 

机に突っ伏して眠ってしまった

 

 

 

するとその数分後に

 

肩をポンポンと叩く人がいた

 

 

 

目を開け横を見ると

 

その先生がしゃがんでこちらを見ていた

 

 

「おはよう。どこか分からないところある?」

 

 

そう言ってニッコリと笑った

 

あのクールそうな先生が

 

無邪気な笑顔を見せて笑った

 

 

 

この瞬間、心が惹かれる音がした

 

顔や雰囲気は初めて見た時から

 

タイプだったし

 

 

何よりこんなに優しい笑顔を貰ったのは

 

本当に何年振りだったから嬉しかった

 

 

僕は理由もわからず何故か

 

先生に今日で学校を辞めるつもりでいると

 

話した

 

 

すると穏やかで優しい先生は

 

スッと険しい表情に変わり

 

「どうして辞めちゃうの?」

 

そう尋ねてきた

 

 

 

僕は学校が退屈だからと

 

冷たく言い放った

 

 

すると先生は

 

「もう少し考えてみた方がいいよ

 

楽しいこといっぱいあるのが高校生だよ

 

もし本当に退屈で辞めたかったら

 

もう一度その時、私に言いに来て。

 

それまでもう少しだけ居てみようよ」

 

 

 

僕はこの先生と話している時だけ

 

本当の自分だった気がしてた

 

 

まだ会って間もない教師に対して

 

この異様なまでの安心感はなんだ。

 

そう思ってもう少し学校にいてみる事にした

 

いや、本当は先生ともっと一緒にいたい

 

そう思ってしまったからなのかもしれない

 

 

 

 

その日から先生は

 

よく話しかけてくれるようになった

 

 

朝登校して来た時も「おはよう」と

 

夕方帰る時も決まって「またね。」と

 

クールな印象だった先生が

 

手を振ってくれていた

 

 

 

授業の時も決まって僕のところへ来て

 

「分からないところある?」と

 

必ずあの笑顔を見せて

 

 

 

遅刻常習犯だった僕が遅刻し昼に来た時は

 

「おはよう。待ってたよ」と

 

ドキッとさせられた

 

 

 

少しずつではあったが

 

日が経つにつれ話す機会が増え

 

冗談を言える仲にまでしてくれた

 

 

 

授業で分からないところを

 

教えてくれるときの真面目な顔と

 

僕と話す時のあの無邪気な笑顔

 

その優しさに僕は完全に惚れてしまった

 

 

 

いつしか退屈だった学校が

 

先生に会える楽しみに変わっていって

 

辞めることを辞めた

 

 

 

先生に会いたいから学校へ行く

 

自分のその本心には気付いていても

 

先生にそれを言うことは出来なかった

 

 

 

きっと先生にそれを伝えたところで

 

優しい先生は、またにっこりと笑って

 

「ありがとう」と言うに決まってる

 

 

 

ちゃんとした返事がもらえない事が 

 

恐怖だったから

 

叶うはずはないと分かってはいても

 

好きになったあの日から

 

フラれるのが怖かった

 

相手にされなくなるのが嫌だった

 

 

 

そんな気持ちを抱えたまま

 

僕はまた学校へ向かった