【ブログ小説】失恋小説 先生の忘れ方を教えてください 第3話

 

第3話 一緒にいるために

 

 

 

 

 

先生と始めて喋ったあの日に

 

先生に言った「辞める」の一言

 

自分が悪いのに現実を突きつけられ

 

頭に来て辞めてやる!と怒鳴って

 

また先生を悲しませるような言葉を

 

吐いて困らせた

 

 

 

こんななんの取り柄もない

 

ただ迷惑と心配しか運んで来ない

 

問題児をそれでも先生は気にかけて

 

いつものように話しかけて来てくれる

 

惚れたきっかけであるあの笑顔でまた

 

 

 

本当は困らせたくなんかなかったし

 

ずっと笑っていて欲しかった

 

けど2年生から先生と離れて

 

学校に行き続けられる自信もないし

 

先生のいない学校なんて

 

僕にとっては刑務所と一緒だった

 

 

 

次の日から僕は理不尽に怒鳴った

 

先生と同じ科の一番偉い男の先生に

 

頭を下げて

 

「これからテストも授業も頑張るし

 

学校にだってちゃんと朝から時間通りに

 

来るからチャンスをください」と

 

頼み込んだ

 

 

 

科長の先生は

 

「これから頑張ってくれるなら 

 

ちゃんと指導もするしお前がこの科に

 

入れるようにもしてやる」

 

そう言ってくれた

 

 

 

その日からテスト勉強を始めて

 

夜遅くまで教科書の範囲を二回読み返して

 

テストが午前で終わって

 

みんな帰っていく中で

 

1人教室に残ってテスト勉強をした

 

 

 

先生はテストの丸つけや仕事があるのに

 

わざわざ教室まで足を運んできて

 

分かるまで優しく教えてくれた

 

 

 

夏までは学年最下位だった僕も

 

成績で科を決める年末には

 

学年50位以内には入れて

 

先生のいる科に入る事が出来た

 

 

 

先生にそのことを伝えにいくと

 

クールな先生が目に涙を浮かべ

 

顔を赤くして喜んでくれた

 

 

「おめでとう。よく頑張ったね

 

やっぱりやればできるじゃん」

 

 

普段は絶対にしないのに

 

僕の両手を握りしめて

 

泣いてるのか笑ってるのか分からないくらい

 

あのクールな人の顔が乱れていた

 

 

 

先生が思った以上に喜んでくれるから

 

 

「どうだ!」「やっぱ俺ってすごい!」

「先生と一緒になれた!嬉しい!」

 

 

色んな調子めいた言葉を考えて

 

先生に言うつもりだったが

 

何一つ口からは出てこなかった

 

先生の喜ぶ顔が何より嬉しくて

 

何よりなんか照れくさかった

 

 

 

それからは先生の科に受かった僕に

 

今度はその科で教わる授業を

 

誰より先に教えてくれたり

 

問題の解き方のコツなどを事細かく

 

教えてくれた

 

本当に先生は僕が同じ科に入れた事

 

それを喜んでくれていた

 

 

 

一年生が終わる終業式の日に

 

帰り際、先生と会って

 

将来について話をした

 

 

 

僕が通ってた高校は工業高校だから

 

卒業後は9割強が就職し

 

その残りは専門大学へ進むという

 

その2択しかなかった

 

 

先生のいた科は電気科だったから

 

将来は職人にでもなろうかな、って

 

まだ何も決めていないのに

 

冗談半分でそう先生に話したら

 

 

「そっかぁ、かっこいいね!

 

きっと○○ならどんな仕事も大丈夫!」

 

 

そう励ましてくれた

 

けどそれと同時に

 

卒業して就職すれば学校には来れない

 

先生の授業ももう二度と受けられない

 

先生に会う理由さえなくなってしまう

 

それに卒業したその先を考えたら

 

先生にもう二度と会えないんじゃないか?

 

そう考えたら将来の話なんか

 

したくもなかったし就職もしたくなかった

 

けど今日もまた僕の話を嬉しそうに

 

笑顔で聞いてくれる先生を前に

 

そんなこと言えなかった

 

この人は素直で真っ直ぐで優しいから

 

きっとそんなこと言ったら

 

また困らせてしまうと思ったから

 

とても言えなかった

 

 

いつものように見えなくなっても

 

手を振り続けて別れを告げる先生をみて

 

いつかはあの姿を最後に会えなくなる日が

 

必ず来ることに本気で恐怖を感じた

 

 

 

そもそも僕が電気科に来た理由を

 

あの人はまだ僕がついた嘘を

 

本気で信じているだろう

 

 

「電気が好きだから」

 

 

なんで電気科がいいの?

 

そう聞く先生にその嘘しか出てこなかった

 

 

でも本当は違う

 

電気なんか好きじゃないし

 

分からない

 

小難しい計算式も電気の特徴も性質も

 

全部分からない

 

 

頭いい奴らがこぞって来たがる電気科に

 

学年1バカで出来の悪い僕が

 

頭いい軍団とテストで勝ち目のない

 

戦いをしてでも電気科を選んだのは

 

電気が好きだったからなんかじゃない

 

 

先生が好きだったから

 

先生のいるところに行きたかったから

 

できることなら、どうせ別れる日が来るなら

 

せめて残りの時間、できる限りでいいから

 

アナタの隣にいさせて欲しかった

 

 

何より離れたくなかった

 

あの笑顔を見れなくなるのが怖かった

 

他の奴らと楽しそうにしてる先生を

 

見たくなんかなかった

 

だって僕が学校に来る理由なんて

 

先生以外には何もないから

 

 

そんなことを考えながら

 

本当は気づいて欲しいこの気持ちを

 

バレないように隠しながら

 

手を振る先生を後に

 

夕日が沈んで暗くなった家の方へ

 

帰っていく

 

 

 

 

第3話完

 

 

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第2話 選択肢

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