伝えることが出来なかった先生へ最後のレポート

<p>今週のお題「あの人へラブレター」</p>

拝啓、高校時代のK先生

覚えていますか?

僕はずっとアナタが大好きでした

教師としてではなく一人の女性として

教師としては異例の若さで教壇に立ち

先輩や上司からは面倒ごとを押し付けられ

疲れ切っていたはずなのに

学校へ来るたび問題を抱えて

心配や迷惑をたくさんかけたはずなのに

アナタはいつも僕を笑顔で迎え入れてくれた

僕は頭が悪い。誰よりも勉強しなくては

いけない立場にいるのにも関わらず

授業では寝てばかり

起きていると思えば周りの子達と

騒ぎ明かし教師からすれば僕は単なる

授業の邪魔者でしかなかったはず

それなのに授業で分からないところや

つまづいた時は一番に僕のところへ

駆けつけて来てくれる優しい先生

答えを教えるだけでなく

その答えに辿り着くまでを

丁寧に優しく教えてくれた

休み時間で先生とすれ違った時も

レポートを出していない僕を怒ることもせず

「分からないことがあったらいつでも

相談しにおいで。」と

ニッコリ笑ってそう言ってくれたのは

先生ただ一人でした

そんな優しい先生にもっと構って欲しくて

もっと喋っていたかったから

わざと分からないフリをした日もあった

わざと実習中、手を止め先生にアピールをした

そしたら先生は相変わらず

「どうしたの?」「わからない?」と

また笑顔で優しく教えに来てくれる

何より僕は笑った先生がこの世で一番

大好きだった。今でもそれは変わらない

笑った先生が大好きだから

先生に会える月曜と火曜は必死で

会話の機会を作って笑わせてあげたかった

どんなに退屈な話でも

友達に聞かせたら面白くない話でも

先生だけは笑ってくれた

いつも嬉しそうに話を聞いてくれた

今でも忘れない思い出は

先生と二人きりで昼から夕方までやった

補修の時

授業で終わらせなければいけない範囲を

終わらせられなかった僕に

ずっと付きっ切りで教えてくれたこと

何回か教室を出て行く先生を見て

「他にやることがあるのかな?」と思い

少し廊下で先生の様子を見ていると

先生は授業のプリント作りや

テスト対策を作ったりして本当に忙しそうだった

僕は先生の仕事の合間に補修をしているのに

先生は嫌そうな顔1つせず

僕がいる教室へ戻って来るたびに

「大丈夫ー?」と心配してくれた

補修から三時間がたっても終わらないから

先生に「ごめんね。遅くて」

と言うと先生はまたニッコリ笑って

「いいよ。待ってるから」と言ってくれた

でも何より嬉しかったのは

先生が隣にずっといてくれたこと

いつもはクールで落ち着いてる先生が

机に伏せるように手の上に顔を乗せ

僕が何か喋るたびにこっちを見て

「なあに?」と笑うあの顔は

もう例えようがないくらい愛おしくて

このままずっとこの時間が続けばいいのに

なんて思ったりして

補修がやっと終わったのは夕方5時ごろ

「先生、ありがとね」って言ったら

「こちらこそ」って言ってくれて

その時、心底この人に惚れてるって確信した

球技祭の時もわざわざ僕が参加している

ドッジボールの試合を見に来てくれた

先生が担当してる球技の会場からは

校内とはいえ結構距離があるのに

見に来てくれた

卒業後に貰ったあの球技祭の写真は

先生が撮ってくれたものだから

今も大事にしています

先生が本当に好きになってしまったから

最後に提出したレポートの最後の方に

先生が好きだったと遠回しに書いた

卒業3日前に全員に返された

3年間提出し続けたレポート

先生は一人一人にメッセージを残してた

他の人のを見る限り先生らしい言葉で

評価やレポートの出来、卒業後の激励なんかを

短くきっちりまとめて書いていたけど

僕のレポートだけは違った

そこに書かれていたのは最後に提出した

レポートに記した遠回しの告白文の返事

「最後に提出したレポートに感謝の気持ちを

書いてくれてありがとう

凄く嬉しかったからあのレポートは返しません

先生の宝物です

ありがとうと書いてくれたけど

感謝しているのは私の方です」

そう返事が書かれていた

先生、感謝してるのは間違いなく

俺の方ですよ

だってこんなに素晴らしい日々を生き甲斐を

先生を好きにさせてくれたんだからさ

卒業式に直接想いを伝えるって決めていた

それなのに伝えられなかった

最後はビビってしまった

先生にフラれるのが本当に怖かった

でもそんなの言い訳だよね

先生がくれた返事に書かれていた

「またどこかで会えたら」

その言葉が卒業前に引っかかっていた

「学校にくればいつでも会えるのに。

俺が来ないと思ってるのかな?」

そう甘く考えていた

そして卒業して四月の初めくらいに

担任の先生の電話番号を持っていたから

近況報告も込めて電話してみた

そしたら担任の先生から

僕が好きだった先生が辞めたことを知らされた

理由は今でもわからない

「またどこかで会えたら」

この言葉は辞めると決めていたからこそ

書けた言葉だとその時初めて知った

だって先生、卒業式の日に

「また遊びに来てね」って言ってたじゃん

なのになんで何も言わずにいなくなるんだよ

ショックのあまり担任の先生に電話口で

そう強く当たってしまった

そしたら担任の先生は

「きっと○○には言えなかったんだよ

先生は優しいし何より○○を本当に大事に

思っていたから傷付けたくなかった

○○が先生の事を好きだったことは

学校中が知ってるよ。だって見てたらバレバレだもん

だから先生もわかってたんじゃないかな。

最後の最後で○○を傷付けたくなかった

自分の事で寂しさを感じて欲しくなかったんだよ」

僕は最後の最後まで先生に守られていた

先生が僕に初めてついた嘘でさえ

僕を守るためについた嘘だった

確かにあの頃の僕にそんな事を言ったら

僕は壊れていたかもしれない

だってこんなに好きになれた人に

もう2度と会えないと言われるようなものだから

どこまでいい人なんだよ先生

直接ありがとうって言う前にいなくなるなんて

ずるいよ先生

せめて人を好きになる事を教えてくれた

先生に、最後は先生への想いの忘れ方も

教えて欲しかった

でも本当に本当に感謝してるよ。ありがとね

先生がいなかったら今の僕はいません

先生との出会いが僕の人生の全てでした

生き甲斐をくれた事

心配してくれたこと

最後まで面倒見てくれたこと

好きでいさせてくれたこと

そしていつも笑ってくれたこと

感謝してもしきれません

直接言えなかったあの日の想いを

届けられなかったこの想いを

せめてこの場を借りて伝えます

先生、大好きだった

一度しかない青春が先生で本当に良かった

先生にそれだけ伝われば満足です

いつかまた会えたらその時は

笑いすぎて涙が出るくらい

また笑わせてあげたい

S high school E Class No.37

問題児より