【ブログ小説】失恋小説 全ての失恋の癒しになれば
2話 選択肢
満開に咲き誇る桜が散って
蝉の声が夏を知らせた
厳しい太陽の日照りが地面を焼いて
モワモワした空気と共に
自分の気持ちと重ね合わせた
いつものように先生と会話がしたくて
あの優しさに、また触れたくて
僕は学校へ向かっていった
朝、校門前で登校してくる生徒に
挨拶をしている先生の姿が
その日はなかった
先生は出張でいないらしく
その日はまるで、入学式のあの日の
退屈を思い出したかのように
つまらない一日だった
隣の席の子と話したり
高校生特有の悪ふざけをしても
顔は笑っていても、ちっとも楽しくなかった
先生が隣で話を聞いてくれる時が
どれだけ本当の自分でいられるか
どれだけ楽しいひと時かを
その時、痛感させられた
放課後、僕は楽しみを奪われた子供のように
どこか寂しげな気持ちになって
いつもは先生を探しては
何か話していたが
その日は先生がいないから帰ろうと
足早に下駄箱まで向かった
すると、前から先生の姿が見えた
出張から帰ってきたばかりだからか
スーツに身を包んでいた
見慣れない先生のスーツ姿
いつもは作業着のジャケットに
細めのジーンズだから
少し先生が違って見えた
すると先生の方から声をかけてきて
「今から帰り?」
そう言ってまた、笑顔を見せた
「先生の方こそ今帰り?」
いつも通り先生に冗談っぽく
そう返した
先生と会話する時、
平然を装うのがやっとだった
心臓は周りにも聞こえそうなほど
顔が赤くなっていないか不安になって
声も震えそうで
この瞬間が一番楽しいはずなのに
子羊のように動揺する自分が
同時に情けなくなった
そんな自分と戦っている僕を他所に
「今日はお話してくれないの?」と
寂しげな顔をしてそう聞いてくる先生
「先生いないから帰ろうかなって」
あくまで冷静にそう返すと
「もうこんな時間だし遅くなっちゃうから
また明日ね!」
相手は先生なのに、まるで
付き合う前の女友達との会話みたいな
ムードに少し嬉しくなった
先生を前にしている緊張からか
時間が経つのを忘れていた僕は
「もう遅いから」という先生の言葉で
辺りが暗くなってるのを初めて知った
それほど目の前の先生に夢中になっていた
「じゃあね先生」と手を振ると
振り返してくれた
歩き出し校門を出る前に振り返ると
まだこっちを向いて手を振る先生
倒れそうになるくらいドキッとした
帰り道で「明日は何話そう」
「明日はどれくらい一緒にいれるか」
その日、指定された課題のことなど
もう頭の中にはなく
先生を楽しませられる話や
その時間がどれくらい与えられるか
そればかり考えて
イヤホンから流れる音楽など
聞こえていなかった
次の日、学校へ向かうと
先生と来年の話をした
来年からはクラスが分かれ
自分の意思でクラスが決められた
僕は先生がいるクラスへ行きたいと
そう先生へ告げた
しかし先生は嬉しそうに
「じゃあ来年も宜しくね!」
といつも以上に元気にそういった
しかしそれを聞いていた先生と
同じ科の一番偉い男の先生が
「出席率の悪いお前が優秀な子ばかりが
揃って来たいと言ってるクラスへ来るのは
まず間違い無く無理だ
定員が割れれば真っ先に切られるのは
不真面目なお前だ」
と冷たく言い放ってきた
僕はまるで先生と僕を突き放そうと
この人はそう言ってるんじゃないか?
まだ少年の心を持っていた僕には
そうとしか捉えられない発言だった
その日、僕はその男の先生に
「先生と同じ科に行けないくらいなら
学校なんか辞めてやる」
と怒鳴って帰った
次の日、僕が登校してくると
まるで何か探し物をしてたかのような
挙動と表情で僕を見つけた先生は
急いで僕の元へ駆け寄ってきた
「おはよう、昨日のこと本気なの?」
「先生と一緒のとこへ行けないなら
学校なんて面白くない」
「だったら今日から真面目に毎日
朝から学校に来て。授業も真面目に受けて
テストもいつも以上に頑張って
じゃなきゃ私がいる科には来れない
そうじゃなきゃ辞めちゃうんでしょ?
そんなの私は嫌だからね」
4つ上の年である先生らしくない
僕と幼馴染かのような口ぶりで
そういってきた
この時の先生の顔は今でも忘れてない
いつも僕の前では笑ってくれていた先生が
寂しそうな顔だった
僕は本当に異常なまでの朝寝坊と戦って
毎日朝から学校へ来てテストも授業も
頑張るか
先生と一緒になれないから
学校を辞めるかの二択を迫られた
せっかく退屈だった毎日から解放され
先生に会いに行くことそれ自体が
楽しみに変わって、
先生を笑わせてあげる事が
人生の生きがいだったのに
そして考えた結果、
僕は先生と一緒になるために
変わろうと決意した
第3話へ続