【ブログ小説】失恋小説〜先生の忘れ方を教えてください〜第4話

 

地元の静かな街並みに

 

また日が昇り1日が始まった

 

 

遅刻癖の酷い僕だったが

 

その日は何故か目覚まし時計の

 

耳を裂くような爆音で目が覚めた

 

 

その日は先生に会える数少ない日

 

いつもより念入りに髪のセットをこなし

 

雨で少し錆びた自転車に乗って

 

今にも雪が降り出しそうな冷たい風の中

 

先生の待つ学校へと向かった

 

 

学校について午前の授業を終えると

 

背の高く体格のいい男の先生に呼び出され

 

職員室へと連れていかれた

 

 

その先生は進路担当の先生で

 

無理にでも先生のいる電気科へと

 

進もうとする僕へこう話した

 

 

「お前がなんで電気科を熱望してるのか

俺には分かるぞ。

○○先生と離れたくないからだろ?

お前が○○先生を好きな事は有名な話だからな

 

でもな、電気科は成績が良い子ばかりだ

お前の事を悪くいうわけじゃないけど

お前は授業をサボったり、受けても寝てたり

授業態度もテストの点も悪い

 

電気科は人気がある。その人気の一つは

お前と同じ○○先生の授業を受けたいという

子が多いからだ。定員が割れた場合

判断材料は成績になる

 

そうなった場合、お前は間違いなく

候補から外される。

でもお前はそうなったら

学校をやめるんだろ?」

 

 

かなり冷静な面持ちでそう聞いてきた

 

僕は静かに「はい」と答えた

 

すると先生はまた口を開き

 

 

「昨日な、職員会議でお前の話になったんだ

お前を電気科に入れるかどうかの話だ

普通なら不真面目なお前は余ったところへ

入れられるが先生達のご好意や

 

一人辞退者が出たからお前を電気科に

入れられることになった

だからこれからは頑張ってみろよ」

 

 

突然の報せだった

 

先生とまた一緒に過ごせる

 

そんな嬉しい感情と共に

 

どうしてこんな僕に甘いのか

 

学校側の意図が不可解にも思えた

 

 

それでも電気科に入れた事を

 

先生にまた伝えに行った

 

 

 

「おめでとう!」

 

先生は満面の笑みを浮かべ喜んでくれた

 

僕はそれがとても嬉しかった

 

 

先生と少し話して帰ろうとした時

 

ちょうどその場を通ったクラスの友達に

 

 

「あの先生、俺たちの前じゃ笑わないし

普通に教師と生徒って感じなのに

お前といるときだけよく笑うよな…

ダメな後輩を気にかける先輩みたいな感じ」

 

 

確かにその通りだった

 

先生の授業のとき、先生を見てると

 

僕以外の生徒には滅多に笑顔を見せなかった

 

もちろん優しい性格は健在だったが

 

単なる先生という感じだった

 

 

それに先生は分からないところがあっても

 

聞かなくちゃ教えてくれないタイプだった

 

その反面、僕が授業で詰まると

 

真っ先に来て「どうしたの?わからない?」

 

と心配しに来てくれていた

 

 

先生の真意は彼女にしか分からない

 

思春期だからか色んな事を疑問に思う

 

 

 

 

晴れて電気科の仲間入りを果たした僕は

 

より一層、教師からのマークがついた

 

 

エリート揃いのクラスの足を引っ張らないか

 

問題を起こさないかなど、常に警戒され

 

ついには学校をサボると

 

僕の携帯に電話が来るようになった

 

 

 

でも、決まって電話が来ない日があった

 

それが月曜と火曜の二つだった

 

月と火は先生の授業がある日で

 

僕が必ず朝から登校してくることを

 

知っていたからだった

 

 

それでもそんな事情を知らない先生は

 

「今日は早いんだね!」

 

と無邪気に笑ってみせた

 

 

先生に会えるこの二つの日は

 

僕にとってかけがえのない日だった

 

 

それでも物足りない僕は

 

わざと授業のノルマを遅らせ補習を受け

 

先生を独り占めにしていた

 

 

情けない僕は先生と二人きりで

 

隣に座られると何も話せなかった

 

いつもならマシンガンのように出てくる話題が

 

何故か出て来なかった

 

胸の高鳴りも収まりそうにないし

 

鼓動の音が聞こえそうなほど

 

早く脈打っていた

 

 

先生はよく僕を期待させる

 

どうして、その気もないのに

 

こっちを向いてニコッと笑ったり

 

「私はそんなアナタが好きだな」

 

なんて期待させるようなことを言うのか

 

 

女心は本当によく分からなかった

 

 

 

ー第4話ー完